VP002B組立手順
VP002B : 1.3mm厚黒染ローフランジ車輪

このページではVP002BでNjゲージ用車輪(軌間6.5mm・全軸長13.2mm)を作ります。
※VP002Bを完全な車輪として完成させる場合、別途、車軸とスリーブが必要です。
 1:必要材料、工具例
●必要材料
・VP002B
(左図青部品)
・VP050B
(左図朱色部品、KATO社製中空軸車輪使用時は不要)
・VP100
(左図黒色部品、KATO社製中空軸車輪使用時は不要)
●VP050BとVP100を使用しない場合
・KATO社製中空軸車輪を必要分
品番11-610、11-611、11-605、11-606
車軸とスリーブ(黒いチューブ部分)を取り出すので、どの品番のものでも構いません。品番の違いは、ビス止め台車用か、スナップ式台車用か、黒染めか、銀色車輪かの違いです。
●必要工具例
・バイス(なければペンチと適当な金属文鎮で代用可)
・ラジオペンチ
・ノギス
・小型ハンマー
・ピンセット
・Φ0.8〜0.9mmの不要ドリル刃(軸を抜き落とすのに使用します)
バイスはどんな形でも構いません。

ちなみに弊所では樹脂製水準計にドリルで穴を開けたものを使用しています。
主に製品への傷入り防止やメッキ保護のためにこの方法をとっていますが、金属バイスの上で作業しても目立つ傷は入りません。
 ※VP050BとVP100をお持ちの方は「3:VP002Bに車軸を打ち込む」の項目から作業を開始してください。
加工前の全軸長を計測します。
この値が加工後の仕上り寸法になります。KATO社製車輪ですと、
おおまかに13.2mmもしくは14.2mmです。
  2:車輪を抜く、車軸を抜く
台車を分解し、黒いチューブ部分(以下:スリーブ)から車輪を抜き取ります。
少し力が必要ですが、手で引き抜くことができます。
くるくると回すように引っ張ると徐々にスリーブから車軸が抜けていきます

大量にこの作業を行うと指が痛くなるので、ハンカチやティッシュなどで指を保護することをおすすめします。
この時、車軸の長さを測定しておきます。車軸の抜き取り後に計測も可能ですが、車輪がついているほうが指で保持しやすのでこの時に行っています。
KATO社製車軸は大まかに約5.95mmと約6.9mmの長さの車軸が存在します。
古いKATO社製品は6.9mm軸を使っていることが多く、逆に最近の製品はほとんどが5.95mm軸です。
車軸の長さには製造寸法公差があります。
5.95mm軸→5.89〜5.97mm程度
6.9mm軸→6.88〜7.0mm程度
事前にすべての車軸の長さを測定し、車輪左右で短い車軸と長い車軸を組み合わせると均等な製品を作ることが可能です。
面倒であれば車輪を完成させた後に、各部寸法を計測して規格寸法から外れたものだけ修正でも構いません。

小型ハンマーで車軸を叩いて押し出します。車輪いっぱいまで車軸をスライドさせます
バイスがない方はペンチの上をバイス代わりにしてください。
φ0.8〜0.9mmの不要ドリル刃を軸に押し当て抜き落とします
この時のドリル刀の保持はピンセットよりラジオペンチのほうが安定します。
車軸が抜き取りできました。
3:VP002Bに車軸を打ち込む

抜き落とした車軸をVP002Bに打ち込みます。
バイスにVP002Bを置いて軸を打ち込むのですが、バイスを少し開き気味にして、VP002Bのリム部で保持してください。
バイスがない方はペンチを開き気味にしてVP002Bをおいてください。
※車輪ボス部は1.55mm厚で製造されているため厚みの違いから水平に置くことができません。
先ほど抜き取ったKATO社製車軸をハンマーで打ち込みます。
車軸の保持は、ピンセットよりラジオペンチの縦スリットを利用して打ち込んでいったほうが安定します。
車軸の先が少し打ち込まれて安定したら、ハンマーのみで車軸を打ち込んでゆきます。
ここで、不良品が出にくくなるワンポイントアドバイスです。
車軸を打ち込む際に一度写真の状態程度まで車軸を打ち込みすぎます。
次にひっくり返して再度、車軸を打ち込みすぎます。
ピボット軸を保護する場合は、ラジオペンチやプライヤーなどでピボット軸を保護しながらハンマーで打ち込んでください。
そのままピボット軸を叩いてもKATO社の車軸は強固なので多少は問題ございません。
写真程度の状態まで車軸を打ち込みます。
VP002Bの軸穴内のメッキ不均衡を車軸で掃除する感覚です。
こうすることによって車輪の振れが出にくくなります。

VP002BをNゲージ軌間で製作される方などの初回の車軸を打ち込み量が少ない改軌の場合に効果的です。
逆にNjゲージ軌間の長軸改軌で製作される方は、VP002Bの軸穴内を車軸が移動する量が多いので、前述の掃除が勝手にでき車輪の振れが出にくいです。
※それでも不良品が出ることがあります。

ご面倒でなければお試しください。
VP002Bへの車軸の打ち込み量ですが、あとで寸法を計算して押し出しますので、適当で構いません。
4:車軸の出具合を計算する
改軌前と改軌後で全軸長が同じになるようにします。

今回は全軸長13.2mmになるように改軌します。
仕上げるバックゲージは5.55mmですが、スリーブは5.25mmのものを使用するとVP002Bのボス部が飛び出しているので、勝手にバックゲージ5.55mmで仕上がります。

スリーブは弊所のVP100を使用するか、ご自身でKATO社製スリーブをカットしてください。
備考:
VP002Bのバックゲージが5.55mm(Njゲージの基本バックゲージは5.25mm)なのは、薄厚車輪ゆえの分岐器などでのはまりこみ脱線を防止するためです。
車軸の出具合を計算します。
VP002Bを全軸長13.2mmで改軌する場合、KATO社製車軸の長さを標準的な長さの5.95mmと仮定しますと、VP002Bのボス部の厚みは1.55mmですので、

全軸長13.2 - バックゲージ5.25 - 車輪の厚み1.55×2 = 両車軸の出具合4.85
両車軸の出具合4.85 / 2 = 片軸の出具合2.425・・・左図のA

これでピボット軸の出具合がわかりました。さらに計算しますと

車軸の長さ5.95 - 上写真のA 2.425 - 車輪の厚み1.55 = 1.975・・・左図のB

となり、フランジ側の軸の出具合が1.975mmとわかります。

5.95mm長さのKATO社製車軸を使用した場合の各寸法は左表の通りです。
 5:車軸を押し出す

車軸の出具合がわかったら、その寸法めがけてハンマーで軸を押し出し、計測、足らなければ押し出しを繰り返します。

軸を押し出しすぎて押し出し量を戻す場合は、ハンマーでピボット側をたたきますが、ラジオペンチでもプライヤーでもなんでも結構ですので、ピボット軸を保護してください(なんならそのままピボット軸を叩いてもKATO社の車軸は強固なので多少は問題ございません)

車軸押し出し用の治具を作成して、バイスではさんで軸を押し出す方法もあります。

この際、適当な金属片や金属ギヤ等をはさんで、ピボット軸の保護をしてください。

治具は古い車輪などを削るなど各自工夫なさってください。
お手持ちでしたら、タミヤ社のピニオンプーラーを使用しても軸の押し出しが可能です。
車軸の長さを測定するときはピボット側(前出図中A)でもフランジ側(前出図中B)でもどちらでも構いませんが、フランジ側のほうがノギスを当てやすいです。
写真はピボット側にノギスを当てており、推奨は写真の反対側の計測方法です。
  6:組み立て
寸法が整ったら組み立てていきます。
手で簡単に圧入できます。
7:仕上り確認 
完成車輪の各部寸法を確認しましょう。
バックゲージは5.2〜5.3mm
全軸長は13.1〜13.3mmもしくは14.1〜14.3mm
程度なら問題ないと思います。
範囲内なら完成です!
8:台車へ組み付け 
台車に組付けます。
フランジが接触するため、台車側にも加工が必要な場合があります。
 9:完成!



改軌・加工お疲れ様でした!

VP002BをNゲージ軌間で製作する場合

VP002BをNゲージ軌間で製作する場合は、バックゲージ7.9mm(7.95mm程度でも構いません)になるように組み上げてください。バックゲージが7.9mmを下回ると、分岐器トング部やフログ部でのはまり込み脱線が発生しやすくなります。
バックゲージを広げる方法は、Nゲージスリーブと車輪の間に0.05mm〜0.1mm程度の隙間を開けて車軸を挿入するか、適当なスペーサーを挟み込んでください。コピー用紙を挟み込めばそれっぽい隙間になります。
※図中では0.1mm程度と記載があり寸法が合いませんが、挟み込むと多少コピー用紙が圧縮されてそれなりのバックゲージになります。

また、前述の車軸大移動によるVP002Bの軸穴内の掃除が完成品の不良率低下に効果的です。ご面倒でなければお試しくださいませ。
※それでも不良品が出ることがあります。
その他、ご理解いただきたい点

VP002Bはガレージメーカーの資金と技術力の限界ゆえ、一定数の不良品が発生しうる可能性があります。
車軸圧入後に車輪がぶれて仕上がってしまったり、車軸の挿入が甘かったり、メッキにムラがあったりなどです。
そのため。ボギー車1両分8枚の車輪に対して予備を2枚同封しております。

VP002Bを装着した車両の走行で一部の基本的な分岐器やダブルスリップスイッチなどの複雑な構造の分岐器で脱線にいたる可能性があります。
分岐器通過テスト一覧表はこちらをご参照ください。(工事中)
また、線路の急激な縦勾配や曲線カントの始まり・終わりなどでもローフランジゆえの脱線に至る可能性があります。なるべく滑らかに敷設された線路上で走行させることをおすすめします。

技術情報

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